今回5度目となる個展も、無事終えることができました。個展を終えて、ほっと一息ついたところで、毎回感じる様々な出会いやご縁をエピソード的に振り返ってみました。
初めての個展は驚きの連続
2020年9月、コロナ禍真っ只中に初めての個展というタイミングを迎えました。
直前まで中止すべきかためらいましたが、幸い人目に付きやすい会場なので、仕事帰りや通りすがりに絵を眺めて貰うことくらいは許されるだろう、という思いで開催に踏み切りました。
元々知り合いも少ないので(^^;)DMでのご案内も最小限にしました。地域新聞に取り上げてもらえたのと、SNSで興味を持ってくれた方が僅かながらいたので、もしかしたら来てくれる人もいるかも…と。
この頃は当然ながら、他会場では中止のところも多く、店舗も休業や営業時間短縮がほとんどでしたので、街全体が何とも閑散とした雰囲気…
暇疲れを覚悟しつつ、慣れない会場準備と展示を進めていると、何やら表からの視線をちらほら感じるようになりました。
「何時からですか?」「入ってもいいですか?」と聞かれ、「あ、1時からです」と最初は答えていたのですが、次々に訪れきりが無くなってきたので、ほぼ準備を終えたところで入って頂くことにしました。
他会場の方なのか、通りすがりなのか、何しろ興味を持って下さる方が多いのにびっくりしました。
開場後は、知り合いの方が次々と駆けつけてくれました。
また、SNSで以前から興味を持って下さっていた方から、お祝いのお花とともに、いきなり絵のオーダーを頂くというサプライズも。
平日も昼休みや仕事帰りと思われる通りすがりの方が沢山立ち寄ってくれました。
駄目元始まりだったのが、逆にあまりの応援、追い風ムードで一体何が起きているのだろう、という不思議な感覚で、訳も分からぬまま時が過ぎていった初個展でした。
今冷静に振り返ってみると、皆が行動を制限されている中、娯楽や癒しに飢えていたのかなあ、という気もします。
その中で私の絵を見てささやかな楽しい時間を過ごしてくれた方がもし居たなら、こんなに嬉しいことはありません。
意外な絵のご依頼
昨年の個展でのお話です。
私は本格的に絵の活動を始める前、猫駅長さんの絵を描き、寄贈したことがあるのですが、
その絵を気に入って下さっていた鉄道&猫駅長ファンの方から、こんな絵のご依頼がありました。
「猫駅長さんの絵をサプライズでプレゼントしたい」
私は訪れたことの無い、また別の駅の猫駅長さんについてのご依頼で、「駅と猫駅長を応援したい」という素敵なお話でしたので、是非お受けしたいと思いました。
ただ、寄贈を断られた場合を考え、やはり事前に駅に了解を取らせてもらえないかとお伝えしたところ、快くご了承下さいました。
実は私自身が駅に行ってみたい、その猫駅長に会ってみたいというのもありました。
なんかサプライズじゃなくなってしまい、すみません(-_-;)とも思ったのですが、ご依頼者にも駅の方にも、大変喜んでいただけました。
この絵にやっと会えた
2年前の個展の時、新聞記事に載せて頂いたキジトラ猫の絵を今年も展示していたのですが、その絵を大変嬉しそうに見つめている方がいました。
前々回の個展の記事を見た時、思い出の猫にそっくりだったので是非見てみたいと思っていたけれど来られず、今回の個展の開催を知り、もしかしたらと思って来て下さったそうです。
「やっと会えたー」と名残惜しそうに何度も見て下さいました。私自身も特別思い入れのある表情豊かなキジトラ猫で、他にもこの絵を気に入って下さっていた方が沢山いました。
絵を見た方はそれぞれに、似た別の猫を思い浮かべるわけですが、不思議な共感を呼ぶところは、特別美形とか目立つとかでは無い「よくいる猫」の魅力の一つでもありますよね。
この表情が人気のキジトラくん
素敵な老夫婦
いつも個展会場として使用している交通会館内のギャラリーは、専属のスタッフが居るわけでは無く、あくまでレンタルスペースなので、
会期中の問い合わせ対応は開催者が行うことになっており、会場内に設置してある電話にかかってきます。(この電話、昭和レトロなダイヤル式公衆電話をそのまま利用しており、かなりいい味出してます)
といっても大体は個人の携帯で用が足りますから、殆どかかってくることはないのですが、新聞記事経由で知った方などから開催確認や道案内の電話がたまに入ります。
今回も、搬入と展示をせっせと行っていると、ジリリリリン!と昭和生まれの自分には懐かしいあの呼び出し音が。←ちょっと一瞬びっくりするけど(^^;)
おそらくご年配の方と思われる声で「あの、新聞を見て電話してるんですが、最寄り駅はどこになりますか?場所は何階?」
一通り説明を終え、「では、お気を付けてお越し下さい。」と伝えると、
「載っていた猫がとても可愛くて、是非伺いたいと思いまして。最終日に参ります。楽しみにしております。」と、開始前から嬉しいお言葉。
そして最終日、再度電話があり、最寄り駅の確認と、これから伺いますとのこと。声の感じから多分初日にご連絡いただいた方だな、と思いました。
駅からは近いのですが、繁華街なうえ、会場のある地下フロアは色んな店舗がひしめき合う迷路みたいなところなので、迷わないと良いなと心配しながら待っていました。
それから、一時間後くらいでしょうか。「あ、ここよ!着いた、良かった」と、ほっとしたような嬉しそうな様子の老夫婦がいらっしゃいました。
ご主人は見るからに足の調子が良くなさそうでしたが、奥様と手を繋ぎ、ゆっくりと楽しそうに会話しながら絵を楽しんでおられました。
「今はこの歳でもう猫は飼えないけれど、数年前まで縁側に遊びに来ていた猫を思い出しました。」
「来る途中も何度か迷いそうになり、やっぱり帰ろうか、いや頑張って行くんでしょ、と励ましながら来たんです」
都内にお住まいで、距離としては遠方ではない場所ですが、このご夫婦にとってみれば歩いて電車に乗ってまた歩いてと、どれほど遠い道のりだっただろうか…本当に良くお越し下さいました。
最後に「頑張って来てみて本当に良かった」「来年もきっと来ます」と言って下さり、私も「来年もぜひお待ちしております。」という言葉が自然と出てきました。
個展では毎回色々な刺激や感動があるものですが、今回一番心温まる出来事でした。まさにプライスレスな喜びです。
その他エピソード&まとめ
・絵は普段全く見ないし興味ないけど、猫たちが可愛くて思わず立ち寄ったという方
・絵の中の猫に呼びかけたり、会話しながら楽しんでいる方
・あまりにそっくりな猫がここにいて、涙がこみ上げてきた、という方
・猫好きの友人に送りたいのでポストカードを全て2枚ずつ下さい、という方
・いつもご案内をありがとう、と可愛い切手シートを下さった粋な心遣いの方
・猫駅長さんの絵を見て私の絵に興味を持って下さり、遠方から個展に来て下さった方
・毎回必ずお花を届けてくれて、文字通り個展に花を添えてくれる方
・私が猫を描き始めて間もない頃から何かと応援して下さる、猫のいる民宿のご家族
などなど、思い出すときりが無いくらいのあったかエピソードがあります。
私自身がいつでも思い出せるように印象的な出来事を書いてみました。これからも続けていくことでまた新しいエピソードが生まれると思うと楽しみです。
初個展の頃を振り返ると、実はタイミングとしてはわりと最悪で、街全体が寝静まり、緊迫感すら漂う時期でした。
いきなりここで終わっちゃうのか!?でもまあ絵は無くならないし、いつの日かわからない次の出番を待つのみ、と半ば諦めていました。
ところが蓋を開けてみたら、大変な状況の中来てくれた方、立ち寄ってくれた方、皆とても温かい。こんな時期だからこそ得られたものが沢山あり、これはきっと続けていくべきなんだな、と思えました。
そして現在。めちゃくちゃ絵が売れたわけでも、有名になったわけでもありませんが、回を重ねるごとに積み重なっていく「心の財産」のようなものを静かに感じています。
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