愛猫のベストショットや身近な可愛い猫の写真、でも額に入れて飾るほどでも無いかな、と
スマホやパソコンのデータに保存したまま、そのうち整理しようと何となく放置…
そんな写真を、あえて絵として残してみませんか?
私も初めての猫絵は、ガラケー時代に何となく撮った愛猫の写真を元に描いたものですが、
絵は今も実家に飾られており、写真とはまた違った存在感があります。
画材は何でも良いと思いますが、耐久性があり、色に深みがある油絵具は、長く飾りたい絵に向いていると思うので個人的にはおすすめです。
ここでは、私が油絵具で猫を描く時の全体的な流れを解説しています。
目次
【猫の描き方 1】写真を撮る
風景画の場合、まずスケッチをしたり、現地で写真を撮る、というところから始まると思いますが、
ご存じのとおり、猫は動きます。
となると、スケッチは難しいので、写真を撮ることになりますが、
そもそも野良猫などは写真を撮ろうと近づくと、慌てて逃げていくことがほとんど…
自宅で飼っている方や、飼っている知り合いがいる場合は良いのですが、
そうでない場合、猫スポットに出かけ、付き合いの良い猫探しからスタートです。
猫スポット探しについてはこちらを参照↓
無事逃げない猫に出会えたら、あとは基本、数打ちゃ当たるです。
当然そう都合良くポーズもとってくれませんし、こちらが望む背景にうまく入ってくれるはずもありません。
猫に近づきたくなるのをグッとこらえ、とりあえず逃げないうちに多少遠くからでもズームでパシャリ。
そこから徐々に低い姿勢でにじり寄りパシャリ、にじり寄りパシャリ、を繰り返し、逃げたら終了。
逆に可愛く寄ってくる場合はひとまずモフモフタイムです(笑)
猫との戯れを楽しみながら、気長にシャッターチャンスを待ちましょう。
カメラを構えているうちに、思わぬところで思わぬ瞬間が訪れたりします。
例えばこちら。近所のペット霊園で普通に撮れたもの。
撮った当時は「やった」感は無かったのですが、最近見返してトリミングしてみたら、
とても良い瞬間だったことが分かり、その後すぐに絵が描けてしまいました。
今はスマホでいつでも写真が撮れるので、シャッターチャンスが非常に増えました。
普段歩いていて猫を見かけたら、あまり良い写真にならなそうでもとりあえず撮る習慣をつけるように心がけましょう。
後でトリミングしてみると意外と良い写真だったりすることもあるので。
写真は、フラッシュ撮影だとかなり陰影が飛んでしまい、絵が描きづらいので、フラッシュ無しで撮ります。
光線の加減、陰影を理屈で計算できたり、記憶で描ける人はどちらでも問題無いかと思いますが、
私の場合その点が非常に弱点なため、写真の善し悪しが結構作品の仕上がりに影響してしまうのです。
撮影が夜とか暗い場所の時は、フラッシュ有りと無し両方で撮っておき、制作時にいいとこ取りで合成する感じです。
写真を撮るときや写真を使って描くときのポイントを更に詳しく解説↓
【猫の描き方 2】写真をトリミング
実際に猫を撮影してみると分かるのですが、たくさん撮れたと思っていても、
見返してみると、ほとんどがボツネタ…?と思うくらい、良く撮れている写真は意外と少ないです。
私の経験上ですが、
・可愛い猫はモデルとして狙われやすいのか、警戒心がかなり強いので、あまり良い表情が撮れていない。
・シチュエーションにこだわりすぎ、シャッターを切る寸前に猫がフレームアウト。
・人なつこい猫は嬉しいが、すり寄ってくるため逆に自然な様子が撮れない。
等…
写真は下絵作りの大事なポイントなので、撮り直せる機会があれば多少手間でも再挑戦しますが、
身近な猫でない場合は撮り直しもそうそうできないので、
スマホやパソコン上で、何パターンもトリミングしてみて、猫が引き立つ構図をひねり出します。
または、猫だけは良く撮れているというものは、いっそ無背景にするパターンもあります。
でも無背景の場合、背景の色や雰囲気作りをどうすれば良いのか分からない…
と言った悩みが出てきますよね。
私が初めて無背景で描いた時は、シンプルに単色で「黒」にしました。
中途半端に創作するよりも猫が引き立ちますし、意外とシックでいい感じになります。(黒猫には向かないですが)
【猫の描き方 3】絵のサイズを決める
油絵を描く際、適確なサイズのキャンバスを選ぶことは、重要なポイントです。
油絵は通常、木枠に麻布を張った「キャンバス」に描きます。
自分で張ることも出来ますが、一般的なサイズであれば、張りキャンバスが売られているので、私はこちらを使用しています。
キャンバスのサイズは、型と号数によって決まります。
Fサイズ(人物)
Pサイズ(風景)
Mサイズ(海景)
Sサイズ(正方形)
号数は0号から100号以上まであります。実際の寸法についてはこちらのサイトに詳しく掲載されています。
https://www.sizekensaku.com/sonota/canvas.html
※サイズ.COMより引用
公募展用などで無ければ、0号~10号位までが一般的な大きさかと思います。
型については、それぞれ描く題材により適した比率とされているようですが、同じ型でも号数によって縦横比は異なります。
例えば同じF型であってもF4号は長方形に近く、F10号は正方形に近いです。
写真を元に描く私としてはF型よりP型の方がしっくりくることも多いのですが、
ここで困るのが、キャンバスも額も、既製品はF型が殆どなんです…(額は特に)
このあたりを踏まえ、
極力、【猫の描き方 2】でトリミングした構図に近い縦横比のF型を選択すると、後々の額選びも種類が豊富な為、スムースです。
また、F、P、M、Sのどれにも属さないSM(サムホール)という特殊な型があります。
小型で飾りやすく、人気のサイズで額も豊富なので、こちらもよく使用します。
【猫の描き方 4】写真をコピーし、下絵を作成
私の手順はこうです。
1.トリミングした写真をプリントする。
2.選択したキャンバスサイズに縮尺を合わせ、カラーコピーする。
3.コピーしたものをキャンバスにテープなどで仮留めする。
4.3をキャンバスごと額に入れてみる。
5.一旦離れて眺めてみる。
6.構図、サイズ等違和感を感じた時は縮尺を変え、2からやり直す。
(場合によってはトリミングから)
手順4以降は、以前はやっていなかったのですが、
額に入れることで、絵の端が数ミリですが隠れ、何となく見え方が変わったりします。
完成後、いざ額に入れてみたら、ちょっと構図気になる…。でも今更直せない。
とがっかりしたことがあった為、それ以来、描く前に額に入れた完成イメージを必ず確認するようにしています。
絵の完成後に額を決めたい時は、仮の安い額や余った額を位置合わせ用にしています。
【猫の描き方 5】下塗りをする
油絵の下塗りについては、こうしなければいけない、という決まりは特にないようです。
一般的に調べるとよく出てくる方法としては、
木炭で下書きデッサン
↓
フィキサチーフで定着させる
↓
茶色系(イエローオーカー、アンバー等)を薄めて塗る
というのがありますが、
下塗り無しで描く人もいます。
私も最初の頃はどう進めていいか分からないので、上記の方法で描いていましたが、
自分の描き方には特に必要性を感じなくなりました。
下塗りはしますが、仕上がりにそのまま生かす為のものとして行っています。
背景ありの場合は黒系の下塗りを薄めず全体に塗ってから描くことが多いです。
無背景の時は、猫の毛色とのバランスを考え、その都度下塗りの色は変わります。
【猫の描き方 6】トレースダウン
下書きデッサンにあたる工程です。
写真コピーを使います。
1.乾いた下塗り済キャンバスに、先ほど位置合わせした写真コピーをずれないようにテープ等で固定する。
2.カーボン紙を写真コピーの下に敷き、輪郭線をトレースダウンする。
3.写し終えたら、固定したままめくって漏れが無いか確認する。陰影も含め、細部で気になるところは写しておく。
下塗りしたあとにカーボン紙で?と思う人もいるかもしれません。
油絵の場合は基本的によほどの薄塗りで無い限り、下書き線は残らないかと思います。
私の場合は比較的厚塗りの為、線はまず残らないので気にしませんが、輪郭線の若干内側をなぞるのもコツです。
また、あくまで描くための手がかりなので、あまりキッチリ濃く写す必要は無いと思います。
カーボン紙も黒、青、赤とあるので、下塗りの色によって使い分けています。
白線で下書きをしたい時は、以前はチャコペーパーを使用していましたが、最近は白いカーボン紙を見つけたので愛用してます。
トレースダウンについては他にも方法があります。詳しくはこちらを↓
【猫の描き方 7】本制作
写真コピーを見ながら、色をのせていく。
まずは写真コピーを見て、大まかに塗り分けていきます。細かい色の違いは気にせず、とりあえずのせる位のつもりで。
絵の具は、最初は初心者用油絵具セットにある基本色で混色を覚えながら、
それが面倒だなとか、物足りない色が出てきたら、画材店で色見本を見ながら買い足すのが一般的ですが、
これも決まりは無いですし、色の種類も本当にたくさんあるので、
描きたい絵に合わせて丁度よさそうな色があれば直接試してみるのも楽しいです。
陰影をつけていく。
影=暗い=単に黒を混ぜる、被せるとしてしまうと、陰影感は出ますが、
全体的に黒ずんだような暗い絵になってしまいます。
よく見ると、例えば青い物の暗い部分は紺色っぽい、茶色の猫の暗い部分は焦げ茶色っぽいなど、
暗い部分にも色はあるので、それを意識しながら描くと、深みが出ます。
と言っておきながら、実は私は陰影表現が苦手なんです。
色や質感に囚われがちなところがあり、陰影が弱いとよく言われます。
その欠点をカバーするため、極力陰影がよく写っている写真を選んでいます。
今はスマホの写真加工アプリも充実しているので、その辺も研究中です。
逆に色や質感は褒められることも多いので、その個性は残しつつ陰影表現の幅も広げたいと思っています。
乾いた固めの筆で、猫の輪郭付近、毛色の変わり目付近をバサッとはらう。
特別絵の知識も無く描き始めたので、猫の毛の質感を出したくて、何となくそうしていたのですが、
後で調べたところ、これはドライブラシ技法というものに当たるようです。
油絵はすぐには乾かないので、この表現に向いています。
また粘度が高い方が程よくかすれるので、絵の具はあまり薄めず、半乾きの頃合いを見計らって行うと良いです。
あまり神経質にならず、偶然のかすれ具合を生かす感じでやっています。
豚毛など固めのフィルバート型を使うことが多いですが、少々痛んできた位の方がまばらで自然な雰囲気が出ることも。
ペインティングナイフで猫の輪郭付近の絵の具を削る
最近は、猫の種類やモチーフにもよりますがペインティングナイフも多用するようになりました。油絵の具は固まると落ちないので、
筆はまめに洗う必要がありますが、ペインティングナイフは拭きとるだけで良いのでとにかく楽なんです。
ナイフの先端部分を使い、絵の具をのせた輪郭付近を軽く何度か引っ掻くように削ると、ドライブラシ技法とはまたちょっと違う毛の雰囲気になります。
作品によって、筆とナイフを併用したり、どちらか一方のみだったり、色々です。
例えばこちらが毛も含めてほぼナイフ使用に徹してみた最初の絵↓
細部を描き込む。
細部を全て描き込もうとすると、主体が分かりづらくなり、労力の割に報われないので(私も陥りがちですが)
絵の中で強調したい部分をまず描き込み、後から他の部分もバランスをとる程度に加筆すると、見やすい絵になります。
猫の絵の主体は当然猫ですが、中でも目とヒゲには特に神経を払います。
といっても特別凝ったことはしてません。
猫の目の独特なガラス玉のような透明感を出すため、
不透明色を塗って乾いた後に同系の透明色を被せます。
でも何より大事なのは、目にキャッチライトを入れること。
目は、キャッチライト(瞳に光を映り込ませること)で途端に表情が出て、猫が生き生きとしてきます。
キャッチライト無しの状態↓
キャッチライトを入れた状態↓
ガラリと変わりますよね。
ヒゲは、コツとかは無いですが、丁寧にシャープに描くようにしています。
昔は適当に描いてしまってたんですけど、結構大事な部分だったと後悔しています。
【猫の描き方 8】仕上げ
何となく自分が納得いくまで描けたかな、という段階にたどり着いたら、
乾燥後、額に入れ、しばらく眺めましょう。
部屋の中で一番距離を取れるところに置き、離れて客観的に眺めるのがベストです。
誰でもいいので、自分以外に見てもらえる人がいればなお良いです。
思わぬ見落とし、塗り残しなど、色々見えてきますので、再度きちんと仕上げましょう。
画力や作風に関係なく、誰でも気がつく部分なので、大事なところです。
個人的には展示を見た時、たとえ絵が良くても、この点が欠けているとどうしても気になってしまうので、自分も気をつけています。
【猫の描き方 9】サインを入れ、完成!
絵を始めた頃、サインて入れる必要あるの?と思っていた時期もありましたが、
今では入っていないと未完成と考えるようになりました。
これは私が描いた作品!と自信を持って完成の意味を込めて入れるようにしています。
作品の一部として、色のバランスを考えながら入れています。
作品の世界をどうしても邪魔しそうな時は、落款と同じような赤色で小さめに入れると割と馴染むのでそうしています。
【猫の描き方 まとめ】
一枚の猫が完成するまでの手順を私なりに整理してみたのですが、いかがでしょうか?
また、実際の制作風景はこちらで紹介しています。↓
何しろほぼ自己流で、手当たり次第実験の様に試しながら楽しんできた結果なので、
細かい技法の説明が無かったり、油絵の基本からずれまくっているかも知れません。
ですが、絵を描くこと自体は自由で、絵画教室で学びたい人、ちょっと興味があるからやってみたい人、様々かと思います。
どのみち、もっといい絵が描きたいな、と思えば、形はどうあれ自分なりの学びが必要になってきます。
私も今、その学びの最中で、絵を続ける限り一生続くものかな、と思います。
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